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【2020/11/19】キャリア研究会

キャリア研究会記事

セミナーの模様

代表取締役社長 劉 桂栄

今回の講師は、株式会社ジャンガ・テック 代表取締役社長 劉 桂栄さん。
劉さんは、内モンゴル医科大学にて千葉大学や富山大学で研究活動に従事、1997年に千葉大学教授の紹介でドラッグストアの貿易会社に嘱託社員として内モンゴルから来日。来日半年後、親会社の情報システム部への異動後、インターネットでの業務効率化を実現。これが転機となり、株式会社ジャンガ・テックを起業されました。POSシステムのインターネット化を皮切りに、18年間でいくつも自社製品を開発し、時代を先取りする形でクラウドによるサービス事業を展開してきた結果、現在利用ユーザー数は30万件を超えました。 ビジネスを成功させてきた劉さんが辿った道について、出身地の内モンゴル、日本で出会った恩人たち、取り組んできたビジネス、これからの夢などを交え、お話いただきました。

来日から起業、その実績

劉さんは1997年、34歳の時に内モンゴル医科大学からドラッグストアの貿易会社に嘱託社員として来日されました。 1997年といえば日本では山一證券の破綻や、消費税が5%に増税した年です。世界的には、ダイアナ妃が亡くなった年であり、香港が中国に返還された年でもあります。

現在、代表を務められている株式会社ジャンガ・テックは、創業19年目を迎えられました。
会社のロゴはモンゴル語で、「幸運」、「幸福」などを意味し、「ネットワーク」技術とお客様との緊密な「連携」や十人十色の社員の個性を生かし、社員を幸福にしていきたいという願いが込められています。 自社のクラウドサービスの利用ユーザー数は30万件を超え、代理販売店はOA機器販売会社など、全国に7か所。
「夢はユーザー数を100万件まで増やすこと。この夢を実現するために毎日必死に顧客開拓に力を入れています」と劉さん。

ビジネスとは、ヒト・モノ・カネを繋ぐアシストサービスだと言います。お客様のコアビジネスの裏方として、仕事の効率化を図ることをITで実現。ジャンガ・テックは、これを当初からクラウドサービスとして提供されているそうです。
ジャンガグループは、劉さんが代表を務める株式会社ジャンガ・テック、その製品を作る株式会社DuoTech、そして新たに設立した不動産や輸入貿易を行うジャンガ・コミュニケーションズ合同会社が国内に、海外企業として、アメリカ、青島などに研究開発やソフトウェア企業、そして飲食関連、塾関連会社があり、構成されています。

故郷 内モンゴルのこと

いつも明るい劉さんですが、人見知りせずにどんな人とも話ができる性格は、父親の転勤で引っ越し続きだった小学生の6年間に培われたようです。 内モンゴルの大自然、砂漠の中で育ち、衣食住には困らなかったものの、子供の頃は物が無く、貧しい時代だったとのこと。学校で、中国語、モンゴル語、ロシア語を、大学で日本語を勉強されました。

<故郷、奈曼旗(ナイマン旗)>

内モンゴルの奈曼旗(ナイマン旗)出身です。この小さな町にも立派な政府の建物あります。ゲルではなく、西洋式の建物や住宅があります。奈曼旗で有名なのは、麦飯石(ばくはんせき)。麦飯石は、汚いものを吸収してミネラルを輩出し、美味しい水を作ります。大青山に住んでいる人は、100歳まで生きる人も多く、大変長寿。日本人の研究によると、長寿は麦飯石のおかげで水質がとても良いためなのだそうです。

<内モンゴルについて>

内モンゴルの国土の形は、日本の形に似ています。ただし、広さは日本の3倍以上。地平線まで見渡せるような大きな草原が広がっています。昔の遊牧民は、簡単なゲルとよばれる移動式の住居を使っていましたが、今は、観光地以外では、あまり見ることができません。
内モンゴルと言えば、砂漠です。
国際的な自動車レースが開催されるなど華やかなイベントが開催されるようです。 土地柄苦労するようですが農業もできるそうです。また、風力発電機がたくさんあり、ここで作った電気は、モンゴルでは使われずに北京などに送られるそうです。
内モンゴルの草原で採れる植物繊維が豊富な自然健康食品「ゆうめん」。モンゴル民族は、肉食で果物も野菜もあまり食べず、度数の高いお酒を飲みますが、高血圧の人が少ないなど、健康的です。これは、「ゆうめん」をよく食べるからだと言われています。「ゆうめん」は、焼き餃子のように中に具を入れて焼いたり、お蕎麦にして食べたりするようです。昔は日本にも輸入できたようですが、生産量が少ないため、今は輸出禁止となってしまったそうです。

内モンゴルの民族は、歌や踊りが好きな情熱あふれる民族です。遠くから友人たちが来ると、お酒をささげる歌を歌い、一生の平安を祈ります。
キャリア研究会の野木会長がモンゴルに行かれた時も大歓迎だったようです。お客様がお酒を飲まないと、繰り返し歌を歌い続けるのだとか。
お酒は、空の神様、大地の神様、そして皆の健康を祈って飲む習慣があり、夜は草原で火を囲んで踊ります。「モンゴル人はにぎやかです」と劉さん。

日本で出会った3人の恩人

日本で出会った3人の恩人のおかげで劉さんの人生は好転しました。

<日本で活躍するきっかけを作ってくれた教授>

内モンゴル医科大学に在職中、千葉大学の薬学部と甘草の研究、富山大学の薬学部とモンゴル人はなぜ健康的なのかについての研究を手伝っていたところで東京某財団の研修支援を失いました。その後、1人目の恩人、内モンゴル医科大学名誉教授で千葉大学薬学部M教授の紹介で、その友人が経営するドラッグストアに嘱託社員として入社され、中国からの雑貨などの輸入業務に中国語ができるスタッフとして携わりました。劉さんの日本での生活はこのようにしてスタートしました。

<実績を評価してくれたドラッグストアのオーナー>

2人目の恩人は、千葉県No.1ドラックストア千葉薬品のSオーナーです。 劉さんはこのドラックストアで貿易を担当。初めは中国から雑貨など輸入を担当、その後アメリカのコカ・コーラの担当になり、大変安価な値段での輸入を実現させました。 その実績が評価されたのか、子会社から、半年で親会社、千葉薬品の情報システム部に異動。これが転機になりました。

<起業を応援してくれた千葉薬品の専務>

会社には女性社員がたくさんいましたが、正社員は5名のみ。定年まで勤めても係長ぐらい。課長になっている人はいなかったようです。劉さんは人事部長に「もっと女性が活躍できないでしょうか?」と掛け合い、直接Sオーナーにできる女性を推薦、初の女性バイヤーがこの会社に誕生しました。それ以来、この会社では今まで女性バイヤーが活躍し続けているそうです。
情報システムについて、仕事をしながら効率の悪さを感じていた劉さん。
ある時、T専務に「業務の生産性を改善したい」と申し出ます。
これがきっかけで、劉さんは2年後、起業されました。その際、T専務が応援をしてくれ、千葉薬品を退任してからもジャンガ・テックの監査役になってくださったそうです。
T氏は、3人目の恩人となりました。

これまでの人生とこれからのこと

劉さんは更なるユーザー数の拡大の実現、会社の次の成長について考えているそうです。昨今、世の中に起こる様々な危機をどうやって回避し、好機に転換していくのかということも大きな問題です。後継者についても考えているようです。

劉さんは自身の人生を次のように評価します。
「創業して最初の10年でNo.1の実績を作れたため、目標の40%達成できました。次の10年でユーザー数を拡大できた点を評価し、目標を60%達成しました。これからの5年間は、AIの力でもっと成長し目標の80%達成を目指します。そして、定年までに100万ユーザーを実現し、目標の100%達成を果たしたいです」
「私は、今までだいたい計画通りにきています。結婚する時『理科系』『たばこを吸わない』『お酒もあまり好きではない』『モンゴル人』という条件で主人を選んだのは正しい選択だったと思っています。主人は、自分の足りないところを補ってくれる人です。私は、理屈で考えることが苦手なのですが、創造性があると自己評価しています。反対に、主人は理論的に考え、判断してくれます。」

経営者として、IT事業/教育、卸事業、飲食サービス、不動産に携わってきた劉さんは、今後の人生において、他人を支援しながら、自分が幸せな生活ができればと考えているようです。具体的には、ジャンガ・テックの人財育成、業務の方向性支援、子ども~社会人向け教育支援、チェーン店開発支援に力を入れていきたいとのことです。

<モンゴルゲルを日本に>

モンゴルゲルを千葉県市原市に作りたい。 亡くなった恩人M先生のご長男が「悠山亭」という別荘を使ってくださいと言ってくださっているそうです。そこに、日本の小学生がモンゴルの文化を学ぶことができる研修センターのようなものを作っていきたいと語る劉さん。また、モンゴル人の子どもたちにモンゴル語を教えてもらいたいのだそうです。 「今はあまり時間が無くて、まだ着手できていません。これから、関心を持ってくださる方々と一緒にやりたいと思っていますので、関心をお持ちの方はお声をおかけください。」

最後に

最後に劉さんの好きな言葉を紹介してくださいました。

  • いつも微笑んでいる人は、誰でも驚くほどの強さを秘めているもの
  • 風向きを変えることはできないけれど、いつでも自分の進みたい方向に帆を調整することはできる
  • 16歳で美しいのは自慢にならないが、60歳で美しければそれは魂の美しさ
  • 世の中に何か製品が出た時、保守派はその欠点を見て、批判している革新派はその微光を見て、自分のビジネスにどう活かしていくかを考えている(孫正義)

そして「これから来る70代からの人生は、100点の100年の人生を目指します。みなさんと一緒に美と健康の頂点を歩んでいきたい」と力強い言葉で講演を締めくくられました。

いつも明るく、素敵な笑顔で語りかけてくださる劉さん。どこに行かれても、みんなの輪の中心で美しく輝いている・・・そんな劉さんですが、日本という異国の地で、ビジネスを立ち上げ、たくさんの実績を作り、経営の多角化を進め、社会貢献的な事業にも取り組まれていることを改めて知ることができました。
そして、劉さんの成功は偶然の産物ではなく、「人を惹きつける魅力と人を大切にする優しさといった人間性」「一貫した哲学と実行力といった経営者としての高い能力」の二つを兼ね備えているからこそだと思いました。また、劉さんがいつも幸せそうなのは、家族や友人を大切にしているからだと強く感じました。
人が幸せになるためには何が必要なのかを学ぶ講演となりました。
「100点で100年の人生」を皆さんも目指したいのではないでしょうか。

セミナーを聴いて、受講者のほとんどが、今まであまり知る機会がなかった内モンゴルに興味を持ったようです。質問タイムでは、「ゲルの中でのマナーって、どんなマナーなんですか?」「内モンゴルの小学生対象の塾のことをもっとお聞きしたい。」といった質問が次々あがっていました。また、「内モンゴルに行ってみたい!」という声も多く、「いつかみんなで内モンゴルツアーをしましょう!!」と盛り上がりました。

2020年はコロナ禍の影響で、オンラインセミナーが主流となりましたが、普段なかなか参加できない方や遠方の方にもご参加いただける良い契機になったと感じております。 一日も早く収束し、皆さまにお会いできる日を楽しみにしながら、オンラインとリアルのハイブリッド開催ができるよう準備を進めて参りたいと思います。 次回は外部講師をお招きし、オンラインでの新年会となります。是非お気軽にご参加ください。

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