企業成長は「人事」がカギ
企業成長は人事がカギ
― 経営戦略を実行する「人と組織」の設計論 ―
はじめに
企業経営において「成長戦略」は常に語られます。
昨日(2026年2月19日)、千葉市経営者会にて、素晴らしい企業7社の経営者の皆様のお話を拝聴いたしました。
それぞれのお話は大変示唆に富むものでしたが、私なりに共通点をまとめると、次のようになるのではないかと感じました。
市場分析、商品開発、営業力強化、資金調達、DX推進——。
しかし、どれほど優れた戦略を描いても、それを実行するのは「人」です。
人が動かなければ、戦略は紙の上の理論に過ぎません。
組織が機能しなければ、どんな優秀な個人も成果を出し続けることはできません。
つまり、企業成長の本質は
“人と組織をどう設計するか” にあります。
本稿では、企業成長と人事の関係を、採用・評価・労務・組織開発の4つの視点から体系的に整理します。
一.成長企業に共通する人事の特徴
成長している企業と停滞している企業の違いは何でしょうか?
それは「優秀な人がいるかどうか」ではありません。
成長企業に共通するのは、
人事が“戦略と直結”していることです。
停滞企業の人事は「管理業務」に終始します。
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勤怠処理
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給与計算
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社会保険手続き
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問題社員対応
もちろんこれらは重要です。
しかし、これだけでは企業は成長しません。
一方、成長企業の人事はこう考えます。
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3年後の事業構造はどうなっているか?
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その時に必要な人材ポートフォリオは?
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現在の組織能力とのギャップは?
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どうすれば再現性を持って人材を確保できるか?
つまり、
人事は未来を設計する部門なのです。
二.採用は「未来への投資」である
企業成長の第一歩は採用です。
しかし多くの企業が陥るのは「欠員補充型採用」です。
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退職者が出たから補充する
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忙しいから増員する
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とりあえず人手不足だから採る
この発想では成長は起きません。
成長企業は「戦略採用」を行います。
1. 経営戦略と連動した採用
例えば、
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海外展開を計画しているなら語学・国際経験
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DX推進を掲げるならデータ活用能力
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高付加価値化ならコンサル型人材
採用は単なる人数調整ではなく、
未来の事業構造を先取りする行為です。
2. スキルよりも「再現性」
面接で重要なのは「過去の成功体験」ではありません。
重要なのは、
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なぜ成功したのか
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自分がどの部分を変えたのか
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他環境でも再現できるのか
再現性のない成功は、偶然です。
再現性のある人材こそ、成長エンジンになります。
3. 価値観フィットの重要性
スキルが高くても、組織文化と合わなければ衝突が起きます。
採用とは、
能力 × 価値観 × 将来適応性
の掛け算で判断すべきです。
三.評価制度は「経営メッセージ」である
評価制度は単なる査定の仕組みではありません。
それは、
会社が何を大切にしているかを示すメッセージです。
1. 評価制度が組織行動を決める
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数字だけ評価すれば短期主義になる
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協働を評価しなければ個人主義になる
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挑戦を評価しなければ保守化する
人は「評価される行動」を取ります。
つまり、評価制度は
組織文化を設計する装置なのです。
2. 成長フェーズ別の評価設計
創業期:
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スピード
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行動量
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貢献度
拡大期:
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再現性
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チーム成果
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育成力
成熟期:
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組織最適
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中長期視点
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経営視座
フェーズに応じて評価軸を進化させなければ、組織は歪みます。
四.労務管理は「成長の土台」
急成長企業ほど、労務リスクを軽視しがちです。
しかし、
労務トラブルは一瞬で信頼を失います。
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未払い残業
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ハラスメント
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不公平な給与処理
- 無駄な重複作業
- 業務からスキルアップ低い
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情報管理不備
特に日本では、労務コンプライアンスは経営責任に直結します。
労務管理はコストではありません。
信用資産を守る、また業務効率化のため、それは投資です。
また、透明性の高い勤怠・給与制度は、社員の安心感を高めます。
安心があるから挑戦が生まれる。
土台があるから成長が可能なのです。
五.組織開発こそ持続成長の源泉
企業が持続的に成長するためには、
人材の「能力」だけでなく、「関係性」と「文化」が重要です。
1. エンゲージメント
給与だけで人は動きません。
- 自主性の育成の仕組み
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働きの意義
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成長実感
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承認
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信頼
これらが揃って初めて主体性が生まれます。
2. リーダー育成
企業成長のボトルネックは常に「マネジメント層」です。
優秀なプレイヤーが優秀なマネジャーになるとは限りません。
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目標設定力
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フィードバック力
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育成力
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感情マネジメント
これらを体系的に育成しなければ、組織は拡大できません。
3. 組織文化の設計
文化は自然発生しません。
経営者の言動、評価制度、昇進基準、日々のコミュニケーション。
これらの総和が文化を作ります。
文化が強い企業は、
危機の中でも崩れません。
六.DX時代における人事の役割
AIやクラウドの進化により、
人事の業務も大きく変わっています。
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勤怠・給与の自動化
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データ分析による離職予測
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タレントマネジメント
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エンゲージメント測定
しかし、システム導入が目的ではありません。
本質は、一元管理から、
人事データを経営判断に活かすことです。
人事は感覚の世界から、データの世界へ。
しかし最後はやはり「人」です。
データは意思決定を支援しますが、
組織を動かすのは信頼と対話です。
七.経営者が持つべき人事視点
企業成長において最も重要なのは、
経営者自身の人事観です。
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人事を管理部門と見るか
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人事を戦略部門と見るか
この違いは、5年後に大きな差を生みます。
経営者が人材育成に時間を割く企業は成長します。
経営者が採用に本気の企業は強くなります。
経営者が組織文化を語れる企業は長続きします。
持続成長は仕組みが一番と言っても過言ではありません。
結論
企業成長は偶然ではありません。
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戦略的採用
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行動を設計する評価制度
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安心を支える労務管理
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持続力を生む組織開発
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データを活用するDX人事
これらが統合されたとき、企業は真の成長軌道に乗ります。
人事は裏方ではありません。
人事は経営そのものです。
企業の未来を決めるのは、
市場ではなく、商品でもなく、
人と組織の設計力です。
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